70億の大赤字で話題のRIZAPの決算を見てみた
RIZAPの決算を見てみた
朝いつも通りニュースをみていたらこのような記事が目に止まりました。
【悲報】ライザップ、結果にコミットできず70億の最終赤字 M&Aの拡大路線転換へ
この通り株価も絶賛下落中で、ストップ安になっていおります。(震え)
こちらの記事のようにRIZAPは本業で稼ぎ出した潤沢なキャッシュでもってに積極的にM&Aを仕掛ける戦略がうまくいっており、イケイケで急成長中のイメージがありました。一体どうしてしまったのか!?
せっかくの機会ということで初めての試みではありますが、2019年3月期 第2四半期報告書をみてみようと思います。
はじめに
以下のことについて予め断っておきます。
- 僕自身初心者というか、ファイナンスには詳しくありません!!
- 出てきたそのつど用語の解説をしていきます
それでも読んでやるよ!!という親切というか物好きな方のみ、これ以降読み進めていただければと思います。
あと感触が良ければ、こういう感じでいろんな会社の決算記事を上げていきたいと思って
います。のでどうぞよろしくお願いいたします。
売上利益
まず売上利益を見ていきます。
おろろ??
クッソ順調じゃん!!
指数関数的な伸びを見せており、ここだけ見ると非常に順調そうに見えますが・・・??
営業利益
続いて営業利益を見ていきます。
はえ〜。すっごい。前年度の黒字から大赤字に真っ逆さま。
分析
一体何がおきているのでしょうか。この謎の事態を理解するために、まず二つの指標の確認をしておきましょう。
売上利益 = 総売上 - 売上原価
に対して
営業利益 = 売上利益 - 経費
です。先ほど挙げた二つの数式と表を照らし合わせて考えてみるとこのように考えることができます。
売上は上昇しているが、それ以上に経費が膨らんでいる
ということで業績サマリーを見てみると・・・
売上利益の上昇分よりも売上原価と費用(販管費)の上昇分が明らかに上回っております。
ではこの膨れ上がった経費の正体はなんでしょうか??ついて詳しく見ていきましょう。
膨れ上がった経費の正体
要因は二つあると思っています。
- グループ会社の不振
- 負ののれん代
買い取ったグループ会社の不振
まずはシンプルにこれです。笑
そもそもライザップの急成長劇の陰には、業績が不振な会社を格安で買取りRIZAP社の強みであるマーケティングによって黒字化にしてきた積極的なM&A戦略があります。詳しくは割愛しますが、こんな感じです。
主な損失の企業群をみると、ここ2年ほどで買い取った企業であることがわかります。
- RIZAP、「新星堂」運営元のワンダーコーポレーションを子会社化
2018年2月19日 - ジャパンゲートウェイ WIki
2017年12月
おそらくですが買い取った企業をちゃんと黒字化させないままさらに買い物しまくっちゃった。汗みたいな状況なのかなと。
国際会計基準IFRSへの変更と負ののれん代
続いてはこれです。会計的な話になります。前提知識として「のれん代」について理解する必要があります。
のれん代とは
買収額と簿価の差分
です。(詳細は今さら聞けない「のれん代」「減損」って何?を参照)
買収額 > 簿価
基本的にであるケースがほとんどです。
のれん代は資産として扱われ原価焼却されていきます。焼却されれば当然利益を圧迫することになります。
しかし、先ほども軽く説明しましたがRIZAPは不振の会社を格安で買い取って再建することで成長してきました。この場合のM&Aだとこのような図式が成り立ちます。
買収額 < 簿価
この場合ののれん代はマイナスになります。これを「負ののれん」と表現します。
こののれんが焼却さればどうなるでしょう??普通ののれんのように利益を圧迫するのではなく、逆に利益として計上されます。今までのRIZAPの会計上の利益は負ののれん代によるブーストがかかっていたわけです。
赤字会社は買収する価値がないのかといえば、そうではありません。
正ののれんは固定資産の減価償却と同じく、一定期間で償却する必要があり、このとき帳簿上で損失となります。
逆に、
負ののれんを同様に償却させると、帳簿上では利益を増やすことができます。
赤字会社を買収し、ノウハウを利用したり、経営上の問題を解決することで買収した赤字会社の業績を好転させることができれば、負ののれんの償却を含め、赤字会社の買収で大きく利益を上げることができるのです。
引用: 赤字会社の買収時に発生するのれん代とは?
これがRIZAP急成長のカラクリでした。IFRSへと会計基準の変更を行いました。
IFRSの特徴として
「のれん代の減価償却を行わない」という点が挙げられます。
すると当然負ののれん代の焼却も行われませんから、負ののれん代を利用した会計上の利益の水増しはできなくなります。
そして
従ってIFRSを採用している会社であれば、「のれん代の償却をせずにM&Aを行える」というのは、ある意味正しい言い方ではありますが、今回の楽天とDeNAのように、買収時に見込んでいた成果が実現できないとなった場合には、大きな減損処理をしなければならず、その減損は営業利益だけではなくて税務にも非常に大きなインパクトを与える、というデメリットもあるのです。
RIZAPの今後の成長の鍵
決算が発表されてからどれほど株価が下がっていくのかはわかりませんが、どちらにせよ
- 事業ポートフォーリオの整理
- グループ企業の経営再建
が鍵になることでしょう。
そして今までの成長の仕方からみてグループ会社化した企業を黒字化する力自体は持っていると思うので、なんだかんだちゃんと黒字化させてくるのではないでしょうか。
本業RIZAPの方でも画像のように営業利益は143%成長のようですし、RIZAPGOLFやRIZAPENGLISHもまだ先行投資フェーズではありますがかなり期待が持てそうな感じになってました。
さらに、元カルビーの経営者をCOOとして迎えた事によって今後はより地に足ついた形になっていくと思われます。
ということで、RIZAP株絶賛下落中の現在。う〜ん、タイミング見計らってRIZAP株、買っても良いのでは??といういうのが個人的な見解です。
さてどうなるでしょうかー。
参考記事
赤字会社の買収時に発生するのれん代とは?
RIZAP(ライザップ)の業績をみてみよう~実質的に事業再生ファンド~IFRS移行と負ののれんをやりくりして好業績?~
この半年で時価総額急成長中のライザップのM&Aの歴史!
今さら聞けない「のれん代」「減損」って何?