お金2.0 まとめ
逆説のスタートアップ思考 まとめ
概要
すいません、ほぼ日の経営。 印象に残ったこと
イシューからはじめよ 書評&まとめのようなもの
解くべき問題をを見つけること。問題を評価し、優先度をつけることをすべての始まりに据える。
とYammoty Blogで紹介されていたのでとりあえず読んでみた。なんとなく似たような系統の本で「エッセンシャル思考」という本を読んだことがあるのだが同様の考え方で「課題解決のための具体的な手法」が書かれているのが本書である。こういう「シンプルに大事なことだけに取り組もうぜ」的な考え方が個人的には結構好きです。
概要
- 生産性の高い課題解決の手法についてのフローを解説
- 科学者でありかつ、名門コンサル会社の出身者が執筆
表や箇条書きが使われてよく整理されており、体系的かつ高密度な内容だった印象でした
まとめ
以下はメモになります。本書の情報密度が高いせいか、割と丸写しに近い形のまとめになっています。笑
「バリューのある仕事」とは
- イシュー度(課題の優先度、必要性みたいなものと解釈した)
- 解の質
の2点が高いこと。
取るべき問題解決へのアプローチ
- イシューの見極め
- イシューの分析
- 要素分解
- ストーリーラインの組み立て
- 絵コンテ化
- 軸の整理
- イメージの具体化
- 方法の明示
- アウトプット
- 振り返り、まとめ
以上のサイクルを高速で回すことが理想。以下はその手法の具体的な説明になります。
1.イシューの見極め
需要な問題により多くの時間を費やすため、解くべき問題を絞り込む
目標設定
行動の前には目標・目的を設定する。その時大事なことは
- 明確であること
- チーム内でぶれなく統一されていること
- 相談する相手を持つ事 ー 以下の三点が検証しやすいため
- インパクトがあるものであるか
- 説得力のある形で検証可能かどうか
- 想定する受け手に伝えられるかどうか
仮説を立てる重要性
- イシューに対する明確な答えが出せる
- 必要な情報と分析すべきことが明確になる
- 分析結果の解釈が明確になる
というメリットを得られる。その際に大事なことは
- イシューの言語化
以下3点を意識すると良い
- 「主語」と「動詞」
- 「why」ではなく「what」「how」「where」
- 比較表現
「人間は言葉にしない限り概念をまとめることはできない」
良いイシューの3条件
- 本質的な選択肢であること
- 深い仮説
- 常識の否定
- 「新しい構造」
ここでいう構造とは「共通性」、「関係性」、「グルーピング(セグメントに分けること)」、「ルール」
- 答えが出せるものであること
イシュー度が高いかつ、答えを出す手段が存在する問題のみに手をつける
死角的なイシュー
誰もが「手がつけられない」と思っている問題に対して、自分だけの視点から答えを出せる「死角的なイシュー」を見つけることができれば理想。
イシュー特定のための情報収拾
2.イシューの分析
この工程によって以下の項目が明確化される
- イシューの構造
- 活動の全体像
- 最終的な成果物
- カギとなる分析
- 伝えるべきこと
STEP1.イシューの要素分解
得られる効用
- 課題の全体像が見えやすくなる
- サブイシュー(分解されたイシュー)のうち、優先度が高いものが見えやすくなる
要素分解の際のポイント
- 答えを出せるサイズまで分解する
- 本質的に意味のある固まりで分解する
- ダブりや漏れがないこと
- 分解されたイシューに対しても仮説を持つ
サブイシューの洗い出しの際は「何がわかればこの意思決定ができるか」ということを意識すると良い
STEP2.ストーリーラインの組み立て
ストーリーラインの必要性
- イシューのみではプレゼントして成り立たない
- 説得力の向上
ストーリーの流れによって表現方法も変わってくる。
また、フェーズによってこのような役割を果たす
- 立ち上げ段階
目的意識の統一する - 分析・検討段階
仮説検証がどこまでできているのかを明確化する - まとめの段階
言葉の明晰さの担保と論理の流れを理解しやすくする
ストーリーの流れ
- 必要な問題意識・前提となる知識の共有
- 鍵となるイシュー、サブイシューの明確化
- それぞれのサブイシューについての検討結果
- それらを総合した意味合いの整理
STEP1.軸を整理する
分析のための縦軸と横軸の整理を行う。ポイントは以下
- 原因と結果から軸を考える
基本的に分析とは「原因側」と「結果側」の軸の掛け合わせ - どのような軸で何と何を比較すると答えが出るのか
定性的な分析であろうと、定量的な分析であろうとどのような軸で何と何を比較するのか、どのような条件で仕分けを行うのか、これを考えることが、分析設計の本質だ
STEP2.イメージを具体化する
数字が入ったチャートを作る。
得られる効用
この作業を行うことで以下が明確になり、実際の分析の際の効率化につながる。
- どのくらいの制度のデータが必要か
- 何と何との比較がカギになるのか
意識すべきポイント
比較による「意味合い」をはっきりさせることが大事。典型的なものは
- パターン
- 変化
- 差
STEP3.方法を明示する
実際にデータを集める具体的な方法を明示する。ポイントは
- 既存の手法を活用すること
- それぞれの手法の意味と限界について理解しておくこと
- その分野において相談できる人を持つこと
4.アウトプット
実際に分析・検証の作業を始める。
ポイント
- 重要度の高いものから行う
- 前提の確認
- 鍵となる洞察の検証
- 答えを出そうとしている論点を明確に意識する
- フェアな姿勢
自分に都合のいいデータばかりを集めない - スピードの重視
停滞を防ぐため、丁寧にやりすぎない!!完成度が高くなればなるほど時間対完成度のコスパが悪い。
理想的な実験とは、論理も実験も簡単で、どんな結果が出ても意義のある結論ができるものである」(井出洋二
トラブルシューティング
主に起きうる2つのトラブルが起こった場合の対処法について
- 欲しい数字や証明が出ない
- 構造化して推定(フェルミ推定)
- 足で稼ぐ
- 複数のアプローチから推定
- 自分の知識や技では拉致があかない
- 人に聞く
- 期限を設定して、無理なら諦める
5.振り返り・まとめ
「イシューに沿ったメッセージを人に強く伝わるかたちでまとめる」フェーズ。具体的には以下のような行程になる。
- ストーリーラインの磨き込み
- 論理構造の確認
その際鍵となる新しい概念には名前をつけると効果的。 - 流れを磨く
論理の流れがスムーズになるようにする - エレベーターテストに備える
2,30秒ほどで複雑なプロジェクトの概要を簡潔に説明できるようにする
- 論理構造の確認
- チャートの磨き込み
目的
聞き手に
- 扱っている問題の重要性を理解してもらう
- 最終的な結論を理解してもらう
- 行動に移してもらう
ポイント
- 本質的
- シンプル
「何に答えを出すのか」という意識を発表の前面に満たす。シンプルに無駄をなくすことで受け手の問題意識は高まり、理解度は大きく向上する。一方イシューが曖昧であればあるほど受けての気は散り、理解度は落ちる
その他印象に残ったエッセンスなど
「悩む」と「考えるの違い」
考える | 悩む | |
前提 | 答えが出る | 答えが出ない |
特徴 | 生産的・建設的 | 非生産的、変化を生まない |
「悩んで」ばかりいると、時間だけが浪費されてしまうので注意するようにしたい
イシューが特定できない時のアプローチ
アプローチ | 内容 |
変数を削る | いくつかの変数をグルーピングをしたり固定するなどして減らし、見極めるポイントを整理する |
視覚化 | 問題の構造を、図示・視覚化 |
最終形から逆算 | 現状と理想像とのギャップを考える |
掘り下げる | 「だから??」という問いを立て続けて掘り下げ具体化 |
極端な事例を考える | ある変数を極端な値に変更し考えてみる(ちなみに自分はこのやり方けっこうやっているという自覚がある。) |
これでダメなら諦め他を探す。
イシュー分解の型
- 「where」、「what」、「how」で分解
それに加えて自分の視点を加えたやり方が良い - 最終像から逆算して分解
- フレームワーク
- ビジネスシステム
- 戦略的トライアングル(3C分析)
- バリューデリバリーシステム
- 7S
ストーリーラインの型
型 | 説明 | ポイント |
並列的に「why」を並べ立てる | 「第一に、第二に、第三に、、、というタイプの説明」 | 重要な要素を漏れなくブレなく検討する |
「空・雨・傘」 | 「空」(課題の確認)、「雨」(課題の深堀)、「傘」(結論) | 日常生活よく使う論理の流れなのでそんな気にしなくていい |
「比較」が効果的な分析である脳科学的な根拠4つ
分析において「比較」が効果的である根拠として4つの脳の知覚の特徴が挙げられていた。
領域 | 特徴 | 説明 |
入力 | 閾値を超えない入力は意味をなさない | ある一定のライン |
認知 | 不連続な差しか認知できない | 明確な対比で差分を明確にすればするほど認知度合いは高まる |
理解 | 情報の繋がり | 詳細は割愛するが、 |
記憶 |
学者というバックグラウンドを持つ著者ならではの見解で特に興味深かった
定量分析の3つの型
型 | 説明 | 具体例(該当する図表の名称を羅列している) |
比較 | 分析の本質 | コラム、バー、分布図、ヒストグラム |
構成 | 全体と部分の比較 | パイ、スタック、ウォーターフォール |
変化 | 同じものを時間軸上で比較 | ライン、コラム、レンジ |
定量分析とはこの三つの方の組み合わせでしかない。何を比較軸とするかがポイント。
分析の軸を出す方法
たくさんの事例を出して、似ているものを束ねていく。スポドリを飲む例に取る。
まず事例を羅列
- スポーツの練習
- 試合中
- 風呂上がり
- 二日酔いの朝
- 夏の外出中
- 運動後の休憩
似たようなものを束ねると・・・
- 運動中
- スポーツの練習
- 試合中
- 汗をかいた後
- 風呂上がり
- 運動後の休憩
- 飲酒後
- 二日酔いの朝
となる。
天才の資質について
天才の条件についてマービン・ミンスキー(MIT人工知能研究所の設立者)が以下のように述べたらしい。
- 仲間の圧力に左右されない
- 物事の本質を見失なわず、希望的観測にすがることが少ない
- 多くのやり方を持ち、一つのやり方に固執しない。
筆者の解釈としては固執しないことであるとまとめられていた。
優れたチャートの3条件とその磨き込み
- 1チャート1メッセージの徹底
「このチャートで何を説明したいのか」ということをしっかり言葉に落とすこと
人がチャートを見て「わかる」「意味がある」と判断するまでの時間は、経験的に長くて15秒、多くの人は10秒程度だ。〜〜人はこの程度の時間で「その資料をきちんとみるかどうか」を判断している。つまり、最初のつかみが悪ければそのチャートは存在しなかったことと同じになってしまうのだ。
- 適切なタテ軸とヨコ軸の選定
- フェアな選定
恣意的な選定は信用性・説得力を損なうのでNG - 軸の順序に意味を持たせる
「大から小へ」・「プロセス順」など - 軸の統合と合流
重なっているはずの比較条件を統合 - 軸の切り口の見直し
基本単位を見直すとよい
- フェアな選定
- メッセージと分析表現の一致
- 様々なチャート(表現技法)を試してみる
- 「軸の刻み」の見直し
感想
- コンサルってすごい(小並)
筆者の、事象を高次化・抽象化する能力の高さをひしひしと感じながら読み進めた。 - 練習が必要そう。
いろんな物事においてなるべく意識し、実践していきたい。 - 生産性とか作業効率は大事にしたい
時間には限りがあるし、有効に活用したい。またそのための努力は惜しまないスタイルでいきたい。
影響力の武器 まとめ&書評のようなもの
概要
今回紹介するのは名著として知られるこの本になります。
この本では我々の日常生活の意思決定に知らずのうちに大きな影響を及ぼしている要素・現象を解説しています。またその現象が作用した実例を交えて紹介してくれているため、理解がしやすいです。分量は結構ありますが、章立て担っているためそこまで読みにくいわけでもないと思います
この本を知ったきっかけはだれかのブログの記事内で、営業マンは読んでおくべき!!という文脈で紹介されていたような気がします。読んでみてなるほどと思いました。というのはこの本で紹介されている事例を知っておけば相手の説得や交渉にも利用可能ですし、逆にそういったテクニックから身を守るのにも役立てることが可能だからです。
以下は思い出せるようにメモです。一応悪用厳禁です。笑
1.思考の近道(判断のヒューリスティック)
ある条件を見ると物事を判断してしまう。
- お願いには理由を添えると成功率が上がる
このときお願いの内容は関係なく、「ので」という言葉が入っているだけで良い。 - コントラストの原理
最初に感じたものが基準となる。 例)不動産の当て馬物件、車のオプションなど
特徴
- 要求された相手に対する好感度は関係ない
- 不平等なトレード
小さな恩義で大きなリターンがある。主導権は恩義を感じさせる側にある。 - 「拒否されたら譲歩法」について
拒否されるような要求をして断られた後に、本当の要求を提示する方法。この方法が非常に強力とされている理由はコントラストの原理と返報性の二つの力が働くからである。また譲歩された相手にとっては満足感を感じやすいことにもなりやすいことも理由として挙げられる。
3.一貫性の原理
「一度決定を下したりある立場をとる(コミットメント)と発生する、内部・外部から一貫した行動を取ろうとさせる圧力」について解説されていた。
強力な理由
- 一貫性を保つことによって社会から高い評価を受けやすいから
- 一貫性のある行為は、一般的に日常生活で有益であるから
- 内部的な圧力 - 自己イメージに沿った行動を取りやすくなる。
- 外部的な圧力 - 他者が自分に対し抱くイメージに沿った行動をとりやすくなる。
コミットメントが強力に作用する4条件
- 行動を含むこと
- 広く知られること(パブリック・コミットメント)
- そのコミットメントに対し努力を要すること
- 強制されたのではない(と本人が感じる)ものであること
長期向け承諾先取り法
最初に旨みのある条件を提示し、承諾を得た後に承諾の原因となった条件を取り消す方法。コミットメントをとることで最初の条件以外にも、コミットメントの柱が確立されていくため。
「書くこと」
以下の点で非常に強力なコミットメントとなりうる。
- 記録として残る
- 他者に簡単に公表できてしまう(パブリック・コミットメント)
なお人間は書かれたものに関しては、これは本人の考えであるとみなしてしまう傾向があるらしい。
例
会社の商品に関する575のコンテスト(行動、他者からの認知、努力、自主性と全て揃っている)
ちなみに、第二次世界大戦当時社会主義を掲げる中国政府が資本主義を掲げるアメリカ人捕虜を対象に行なった「エッセイコンテスト」がコミットメントの特性を巧妙に利用した例として紹介されていた。このエピソードが非常に印象に残った。
後、いわゆる「就活」が上記の強力に作用する条件を満たしているという事実に気付き闇を感じた。
4.社会的証明
社会的証明の原理
特定の状況で、ある行動を遂行する人が多いほど人はそれが正しい行動だと判断または真似をする。
- 条件
- ある行動をする人々と自分に類似性がある時
- どう振る舞えば良いのか不確かであること
- 集団的無知
ある教団の例や大観衆の中で一人が見殺しにされた事件が非常に興味深かった。。また、ジョーズタウンでの集団自殺が行われた事件が上記の二点を満たしている。孤島への集団移住(物理的・心理的な不確かさ)
そしてこの章を読んでる途中幾度も「就活」が頭をよぎった。。笑 以下引用です。
筆者から一言 - 社会的証明の原理が最も強く働くのは、ある状況において不慣れで不確かな気持ちを持っていて、どう行動するのがベストかを知る多面位自分の外にその証拠を求めなければならない人です。
5.好意
好意のある人物からの頼みや相談は承諾してしまいやすい。
好意をもたれる条件
- 外見の魅力(ハロー効果)
外見が魅力的であれば、その人の人格や能力も高く思われやすい - 類似性
同じ服とか、同じ境遇とか - 接触と共同
共通の目標に対して協力して行う作業とその回数。 - お世辞・賞賛
- 連合の原理
良い物事と関係があると良い印象、悪い物事と関係がある悪い印象になる。 無意識下で働き非常に協力。例)天候が悪い地域の天気予報士は嫌われやすい、車の隣に美女がいると男はその車を高く評価しがち。
- ランチョンテクニック
食事中に出た物事は好意的に受け取られる - スポーツチームのファンについて
ヨーロッパの地元のサッカークラブファンの異常な熱量も説明がつく。(地元が一緒という点で連合になっている。)
- ランチョンテクニック
6.権威
権威に対する服従は、基本的に合理的かつ得をすることが多いので思考が伴わない形で発生してしまう。
権威のシンボル
- 肩書き
高名な肩書きを持つ人の身長は実際よりも高く知覚されるという実験データが紹介されていた。 - 服装
仕立ての良いスーツ・警備員の制服が特に承諾を引き出しやすい - 装飾品
身につけているものの他、自動車などの使用しているものに対しても当てはまる
実態には関係なく上記の3点に対し、反応してしまう。
7.希少性
希少性の原理
手に入りにくいものの価値を実際よりも高く評価してしまう。
例) 数量の限定、期間の限定
心理的リアクタンス(心理的反発)
自由な選択が制限された時、自由を回復しようとする欲求から以前より強くその自由(サービスや物)を求める。例を挙げると
- 反抗期
親の権威性から自己の自由を獲得するための反発と考えることができる。 - 検閲
検閲をかけられたり独占的な情報(希少性の高い情報)はより価値が高く説得力があると判断される。
効果的に働く条件
- 通常の状態から新たに希少になった時
すでに制限されているものではなく、新たに制限されたものの方に価値を感じる - 競争
他人と競い合っている時 例)オークションなど
8.現代について
- 現代は膨大な情報や物に溢れているため情報処理能力が必要になる。
- その結果、豊富な情報をもとに時間をかけて行う意思決定のやり方から、単一の特徴だけに頼る意思決定のやり方に。
現代は手っ取り早い意思決定をしてしまいがち時代 であると言える。
そのような時代では今まで述べてきたような影響力の武器にしてやられやすいので気をつけよう。
というような警鐘を鳴らして本書は締められていました。
センスのいらない経営 書評&まとめのようなもの
Gunosyの創業から現在までの筆者の考えが示されているのとともにブロックチェーンや機械学習といったホットな話題について触れられています。文章自体は平易で読みやすいです。
また仕事をする上でもはや避けては通れないテクノロジーの活用についての一つの捉え方として非常に参考になりました。
いい大学やいい企業というのは人を序列化したゴールです。「自分はこうなりたい」という意思を持つことが大切です。確固たる意志がなければ目標は「みんなと同じ」になってしまいます。お金持ちになりたい、いい大学に入りたい。そうして序列化されていく。
とか
事業においても、人生においても、一足とびに進んでいくことはありません。(省略)少しずつ、少しずつ積み上がっていくものにしか意味はないのです。
とかのフレーズは個人的に心に残りました。
まとめ
読者に対するアドバイスとしてはざっくりこういう感じでした。以下は内容のメモです。
データ・統計主義
テクノロジーの理解
「Gunosy」の経営戦略について
- 素早い振り返り
- 共有
初期の市場選定について
- メディア
- 市場が大きい
- データが集めやすい
- 市場の立ち上がりが早い
- ソフトウェア
- マネタイズの速さ
- 供給の速さ
- リリースの速さ
市場が大きくデータが集まりやすいかつ、「速い」領域にポジションを取った。
機械学習について
「ある事象やタスクに対して大きな共通の法則が存在し、スケーラビリティが必要」な領域で有効に機能する。
また人間の学習に対して金銭的、時間的コストが大幅に削減できるかつ広範囲において応用可能な点において優れている。
第一世代
- ルールをもとに分類
- ルールから少しでも外れると判定ができない
第二世代
- 「特徴」を人間が指定し、分類
- 人間が考えうる範囲内でしか「特徴」を決めることができない
第三世代
- 膨大なデータから、機械が抽象化し得られた「特徴」によって分類
- 人間が考えうる範囲外で判断基準が作られることが多々ある
- 「ディープラーニング」と呼ばれるもの
第二世代は機械に対していかに適切な「特徴」を与えられたかが精度を左右するのに対し、第三世代からはいかに適切な「データセット」と「目的変数」を機械に与えられたかが精度を左右する。
不確実性の高い現代について
特徴
- ハードウェア社会からソフトウェア社会へ
「モノ」としてのニーズは満たされ、より高い付加価値が必要。 - 手数の多い人が活躍
やってみる精神。試行錯誤。
「やりたいこと」と社会の接地点
「好きなこと」と「商業的成功」の両立
ユーザーファーストについて
- ユーザーに迎合することではない
- 長期的かつ安定的なキャッシュフロー
ユーザーに確かな価値を届け続けられる基盤になる
使われるアプリの特徴
- 単機能であること
- その機能のために磨かれていること
ファイナンス思考(朝倉祐介) 書評&まとめ
最近ファイナンスへの興味が強くなってきた。
前から知っておいた方がいいんだろうな〜という認識ではいた。だが、いまいちとっかかりが掴めずそのままだった。今回この本が発売されると知り、
・ 著者が、mixiのCEOを務めた実務家
・ 前作である「論語と算盤と私」、を楽しく読ませてもらった
という感じの理由で興味を持ち、ファイナンスの知識を仕入れるいいきっかけになるのではと思い読んでみた。
所感
会計やファイナンスに関する本としては非常にとっつきやすい。著書の中でも述べられているが、専門知識を必要としないことやが理由だと思われる。 先ほど述べたように、学者ではなく実務家の方が書いている分、机上の空論感が一切ない。 以上の理由で非常に読みやすく、僕のような初学者にとって最適な本だと感じた。
ファイナンス思考の対極の考え方を本書では「PL脳」と呼んでいる。「PL脳」とは損益計算書至上主義みたいなイメージで理解するといいと思う。 この「PL脳」的な考え方は高度経済成長期では通用していたが、技術革新によって不安定化している現在ではこの「PL脳」的な経営手法は通用しないと筆者は説いている。
豊富なエピソード
この本について特筆すべきはまず、実在する企業の栄枯盛衰のエピソードをファイナンス的な視点で分析すした内容が豊富に盛り込まれているところだろう。例えば昔流通の帝王とも称されたダイエーがいかにして没落したか、など。楽しんで読むことができた。 が紹介しだすと膨大な文字数が必要なので今回は割愛させてもらう。
付録の充実
本書には基本的な会計知識を解説してくれる付録がついている。その点においても初学者に親切な作りになっていると思う。 今まで述べてきた内容に興味のある方は購入してぜひ読んでもらえるといいと思う。
- 作者: 朝倉祐介
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
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ファイナンスの概要
ファイナンスってよくわからないので本書の定義をそのまま抜粋。
企業の価値の最大化のために
・ 事業に必要なお金を最適なバランスと条件で調達し
・ 既存の事業・資産から十分にお金を引き出し、
・ 築いた資産を事業構築のための新規投資のための新規投資や株主・債権者への還元に最適に分配し、
・ その経緯と合理性と意志をステークホルダーに説明する
という一連の活動を指すらしい。
ファイナンス思考とは
ファイナンス思考 | PL思考 | |
---|---|---|
評価軸 | 長期的な事業価値 | PL上の利益・売上 |
時間軸 | 自発的・長期的 | 他律的・短期的 |
経営 | 戦略的・逆算的 | 調整的・管理的 |
長期的な目線に立って事業・財務等の会社戦略を組み立てる考え方。
そのほか重要だと感じたエッセンス
読み進めていく中で重要だと感じた内容をまとめます。
1.会社は「お金」で評価される
2.「GAFA」の共通点
- 短期的なPLの毀損を厭わない
- 市場の拡大や競争優位性確保のため、大規模な投資を行う
- 投資目的が長期的かつ未来志向
複数事業による継続的な成長性 「GAFA」とは急成長を実現した「Google」、「Apple」、「Facebook」、「Amazon」企業群を指す。
3.「PL脳」の行動パターンについて
- 黒字事業の売却をためらう
- 時間的価値を加味しない
時間的価値の要因は、「金利分の価値の差分(リスクフリーレート)」・「不確実性(リスクプレミアム)」の二つ。詳しくは単語解説にて - 資本コストの無視
資本コストという概念を初めて知った。具体的には資金調達の際の利子とか。確かにバカにならない気がする。本書では「事業は調達した資本コスト以上の収益性を実現しなければならない」と表現されていた。確かに。。 - 事業特有の時間感覚を勘案しない
- 事業特有のリスクを勘案しない
4.売上至上主義について その原因と問題点
実入りとなる利益より、売上を優先する考え方。本書ではPL脳のシンプルな症状と位置付けられている。
問題点
売上の「質」を見えにくくし、売上高の要素分解を切り捨てる考え方。
売上 = 商品単価 x 販売個数
同じ売上高だとしても商品単価を減らし販売個数を増やせば、製造コストは下がるがその分マーケコストが上がる。
商品単価が上がり、販売個数が減れば、マーケコストは減るがその分製造コストは上がる。
製造コスト <ー> マーケティングコスト
というように本来どちらが効率的であるかは要素分解してトータルで考えなければいけない。が売上至上主義的な考え方だとそういうわけにはいかない。 そもそも売上が上がれば利益が上がる訳ではない
原因
- マーケットの現状が見えていない
- 前年対比の成長が目的化している
増収増益の維持を優先するあまり、利益率を悪化させたり競争優位性を失いかねない施策を打つことがある。 - 利益をベースとした管理が複雑
利益ベースでの管理が難しいためひとまず売上を意識するうち、現場はだんだんと売上が全てという意識にすり替わっていく。
また売上規模やシェアに固執する企業、および経営者のプライドもその一因になりうる
5.利益至上主義について
一見問題ないことのように思えるが本書によると、この考えに縛られすぎると長期的な会社の価値向上の妨げになるという点でそうではないようだ。詳しく解説する
問題点
- マーケティングや研究開発費の削減
マーケティングや研究開発など成果が出るには長期的な投資が必要なものが存在するが、効果が出るまでの期間が長い分それまでに営業利益を圧迫してしまう。利益至上主義だとそれらを削減する方向に動いてしまう。 - のれんが発生する企業買収を避ける
のれん(詳しくは単語解説を参照)の発生により、償却中の一定期間PL上の利益を圧迫してしまうため買収になかなか踏み切れなくなる。 買収した会社が生み出す利益より、のれんの償却代の方が大きいということは普通にあり得るので、PLのみで判断する人には理解が得られにくい。 - 意思決定が会計基準に左右される
会計基準は上記のように種類がある。先ほどの「のれん」を例にとるとIFRSを採用するとのれんの償却がJ-GAPPに比べて低く抑えることができ、M&Aを行う際有利に働く場合がある。IFRSを採用している会社は「リクルート、電通、楽天、ソフトバンク、メタップス」などがある。(比率は全上場企業の4%と非常に少ない) これらの会社は積極的にM&Aを行なっている。
のれんの償却にとらわれるとFBのインスタグラム買収、googleのyoutube買収などのように技術やユーザーを買うという視点が抜け落ちることにもなる。
「キャシュフローの軽視」
「バリューの軽視」
「短期主義」
短期的なコスト形状を必要とする大胆な施策は着手しずらくなる。 粉飾決算など
6.PL脳に陥る原因
- 高度経済成長期の成功体験
PLに基づいた経営手法は何もせずともマーケットが拡大していた高度経済成長期に最適化されたものであり、人口減少などによってマーケットが縮小していく現代においても多くの経営者がその成功体験から抜け出すことができていないと考えられる。 - 役員の高齢化
「世界の新任CEOの平均年齢は53歳に対し、日本は61歳」というデータ(Strategy&)が示すように、終身雇用、年功序列を基本とする日本的雇用慣行を採用する日本企業において、経営者とは内部昇進者であることが基本。すなわち経験を積んだ高齢からでしか役員にはなれない。かつ経営者として在任する期間が短い。 結果長期的なテーマより、自身の任期内に発生する軽微なリスクへの対応が優先されてしまう。 - 間接金融中心の金融システム
戦時中の統制経済から引き継がれた間接金融中心のシステムの担い手である銀行が、キャッシュフローではなく最終損益を注視する融資の仕方を行なっているため、借り手である企業もそれに合わせたPL至上主義的な考えに陥ったと考えられる。 - PLのわかりやすさ
PLはシンプルゆえ手が出しやすい。PL脳的な管理手法が人事評価にまで埋め込まれていることが現場にPL脳を浸透させる一因になっている - 企業情報の開示ルール
企業情報の開示自体は必要なものであるが、過剰に意識しすぎると「PLを作る」ことに傾倒してしまう一因として考えられる。 - メディアの影響
「増収増益」など業績の変動だけが報じられており、それが企業の価値にどのような影響を及ぼすのかという観点の解説が抜け落ちている。
単語
- WACC 加重平均資本コスト
- ROIC 投下資本利益率
- エクイティファイナンス
株式を発行する資本調達の方法。ここで得た資本は純資産に計上。
ちなみに通常の借り入れをかっこいい言い方で言うと「デット(debt)ファイナンス」。こちらは負債の部に計上。
エクイティファイナンスの特徴は返済期限がないと言うこと。デメリットとして株式を他者に握られる分、経営権が希薄化する。 - リスクフリーレート
現在の100万円と将来の100万円では現在の100万円の方が価値が高いと考える。
なぜなら現在の100万円には預金金利の将来的な獲得分の価値が存在するから。その差分のことをさす言葉。 - リスクプレミアム
現在の100万円と将来の100万円では現在の100万円の方が価値が高いと考える。
なぜなら将来の100万円にはもらえない可能性があり、ファイナンスにおいてはこの不確実性に対して割引率を設定して考えるから。その不確実性を指す言葉。 - キャッシュフロー
直訳すると、現金(キャッシュ)の流れ。Amazonはこのキャッシュフローの最大化を長期的な目標にしている。
プラトゥス曰く「金を稼ごうと思ったら、金を使わなければならない」。まぁそういうこと。(適当) - 営業利益
売上総利益(売上ー原価)から販管費を差し引いたもの。
販管費にはバックオフィスの人件費や減価償却の費用など、製品を作るのに直接関わるもの以外の費用(原価)が含まれる。 - 限界利益
売上高から変動費を引いたもの。ちなみに営業利益は限界利益から固定費を差し引いたものと同値である。 - リベート
メーカーなどが小売りに対して売上高を還元する際の資金。 - のれん
M&Aにおける買収額と簿価(会計上記の評価額の差)。この差は一定の均等に償却されて行く。償却中は当然PL上の利益を圧迫する。 - MBO(マネジメント・バイアウト)
経営者が株主から株を買い戻すこと。株主比率を高めることによって経営者の意思をより反映しやすくするという意図がある。 - 統制経済
国の資源と労働力の全てを戦争のために動員することを目的に構築されたシステム。
本書では初任給という概念、株主軽視の風潮はこのシステムから生まれたとされている。
なんとなく心に残ったフレーズ
- 「道徳を忘れた経済は罪悪、経済を忘れた道徳は寝言」
二宮尊徳の言葉らしい。この人のことは確か高校の倫理で習ったなぁ。 - 「利益は意見。キャッシュは事実」
損益計算書は解釈の介在する余地が存在する以上どうしても経営者の意向が含まれてしまうのに対し、キャッシュフローは解釈の介在する余地が存在しないため、ありのままの事実を示している。という会計の特質を表した言葉。 - 「計画とは将来への意志である。将来への意志は、現在から飛躍し、無理があり、実現不可能に見えるものでなくてはならない。現在の延長線上にあり、合理的であり、現実可能な計画はむしろ「予定」と呼ぶべきであろう」
かっこよかったので全文抜粋した。笑
- 「資産とは金が化けたもの」
松下幸之助曰く。 - 「売上を最大に、経費を最小に」
京セラの創業者である稲盛和夫が経営の原点として言った言葉。売上至上主義的考え方では「売上を最大に」のみの一輪のみを意識しがちになってしまうことに対し本書では警鐘を鳴らしていた。 - 「売上は全てを癒す」
ちょっと昔は一斉を風靡していたが今は跡形も無くなってしまったダイエーの創業者の言葉。 - 「経済成長から得られる利益よりも投資から得られる利益の方が大きい」
経済学者トマ・ピケティの著書『21世紀の資本』によると「g(経済成長)> r(投資リターン)」が成り立つ状況の方が限定的であると述べられている。
感想
序盤の内容に関しては誰が読んでも役に立つと思えるような内容で、金融リテラシーって大事だと感じた。 しかし終盤に向かうにつれて、企業買収などある一定の規模の会社であることが前提の話が増えてきて、学生の端くれである僕にとっては馴染みのある話ではないため少々読み進めるのに苦労した。 実際に経営していると、より理解しやすいんだろうなぁと感じた。