イシューからはじめよ 書評&まとめのようなもの
解くべき問題をを見つけること。問題を評価し、優先度をつけることをすべての始まりに据える。
とYammoty Blogで紹介されていたのでとりあえず読んでみた。なんとなく似たような系統の本で「エッセンシャル思考」という本を読んだことがあるのだが同様の考え方で「課題解決のための具体的な手法」が書かれているのが本書である。こういう「シンプルに大事なことだけに取り組もうぜ」的な考え方が個人的には結構好きです。
概要
- 生産性の高い課題解決の手法についてのフローを解説
- 科学者でありかつ、名門コンサル会社の出身者が執筆
表や箇条書きが使われてよく整理されており、体系的かつ高密度な内容だった印象でした
まとめ
以下はメモになります。本書の情報密度が高いせいか、割と丸写しに近い形のまとめになっています。笑
「バリューのある仕事」とは
- イシュー度(課題の優先度、必要性みたいなものと解釈した)
- 解の質
の2点が高いこと。
取るべき問題解決へのアプローチ
- イシューの見極め
- イシューの分析
- 要素分解
- ストーリーラインの組み立て
- 絵コンテ化
- 軸の整理
- イメージの具体化
- 方法の明示
- アウトプット
- 振り返り、まとめ
以上のサイクルを高速で回すことが理想。以下はその手法の具体的な説明になります。
1.イシューの見極め
需要な問題により多くの時間を費やすため、解くべき問題を絞り込む
目標設定
行動の前には目標・目的を設定する。その時大事なことは
- 明確であること
- チーム内でぶれなく統一されていること
- 相談する相手を持つ事 ー 以下の三点が検証しやすいため
- インパクトがあるものであるか
- 説得力のある形で検証可能かどうか
- 想定する受け手に伝えられるかどうか
仮説を立てる重要性
- イシューに対する明確な答えが出せる
- 必要な情報と分析すべきことが明確になる
- 分析結果の解釈が明確になる
というメリットを得られる。その際に大事なことは
- イシューの言語化
以下3点を意識すると良い
- 「主語」と「動詞」
- 「why」ではなく「what」「how」「where」
- 比較表現
「人間は言葉にしない限り概念をまとめることはできない」
良いイシューの3条件
- 本質的な選択肢であること
- 深い仮説
- 常識の否定
- 「新しい構造」
ここでいう構造とは「共通性」、「関係性」、「グルーピング(セグメントに分けること)」、「ルール」
- 答えが出せるものであること
イシュー度が高いかつ、答えを出す手段が存在する問題のみに手をつける
死角的なイシュー
誰もが「手がつけられない」と思っている問題に対して、自分だけの視点から答えを出せる「死角的なイシュー」を見つけることができれば理想。
イシュー特定のための情報収拾
2.イシューの分析
この工程によって以下の項目が明確化される
- イシューの構造
- 活動の全体像
- 最終的な成果物
- カギとなる分析
- 伝えるべきこと
STEP1.イシューの要素分解
得られる効用
- 課題の全体像が見えやすくなる
- サブイシュー(分解されたイシュー)のうち、優先度が高いものが見えやすくなる
要素分解の際のポイント
- 答えを出せるサイズまで分解する
- 本質的に意味のある固まりで分解する
- ダブりや漏れがないこと
- 分解されたイシューに対しても仮説を持つ
サブイシューの洗い出しの際は「何がわかればこの意思決定ができるか」ということを意識すると良い
STEP2.ストーリーラインの組み立て
ストーリーラインの必要性
- イシューのみではプレゼントして成り立たない
- 説得力の向上
ストーリーの流れによって表現方法も変わってくる。
また、フェーズによってこのような役割を果たす
- 立ち上げ段階
目的意識の統一する - 分析・検討段階
仮説検証がどこまでできているのかを明確化する - まとめの段階
言葉の明晰さの担保と論理の流れを理解しやすくする
ストーリーの流れ
- 必要な問題意識・前提となる知識の共有
- 鍵となるイシュー、サブイシューの明確化
- それぞれのサブイシューについての検討結果
- それらを総合した意味合いの整理
STEP1.軸を整理する
分析のための縦軸と横軸の整理を行う。ポイントは以下
- 原因と結果から軸を考える
基本的に分析とは「原因側」と「結果側」の軸の掛け合わせ - どのような軸で何と何を比較すると答えが出るのか
定性的な分析であろうと、定量的な分析であろうとどのような軸で何と何を比較するのか、どのような条件で仕分けを行うのか、これを考えることが、分析設計の本質だ
STEP2.イメージを具体化する
数字が入ったチャートを作る。
得られる効用
この作業を行うことで以下が明確になり、実際の分析の際の効率化につながる。
- どのくらいの制度のデータが必要か
- 何と何との比較がカギになるのか
意識すべきポイント
比較による「意味合い」をはっきりさせることが大事。典型的なものは
- パターン
- 変化
- 差
STEP3.方法を明示する
実際にデータを集める具体的な方法を明示する。ポイントは
- 既存の手法を活用すること
- それぞれの手法の意味と限界について理解しておくこと
- その分野において相談できる人を持つこと
4.アウトプット
実際に分析・検証の作業を始める。
ポイント
- 重要度の高いものから行う
- 前提の確認
- 鍵となる洞察の検証
- 答えを出そうとしている論点を明確に意識する
- フェアな姿勢
自分に都合のいいデータばかりを集めない - スピードの重視
停滞を防ぐため、丁寧にやりすぎない!!完成度が高くなればなるほど時間対完成度のコスパが悪い。
理想的な実験とは、論理も実験も簡単で、どんな結果が出ても意義のある結論ができるものである」(井出洋二
トラブルシューティング
主に起きうる2つのトラブルが起こった場合の対処法について
- 欲しい数字や証明が出ない
- 構造化して推定(フェルミ推定)
- 足で稼ぐ
- 複数のアプローチから推定
- 自分の知識や技では拉致があかない
- 人に聞く
- 期限を設定して、無理なら諦める
5.振り返り・まとめ
「イシューに沿ったメッセージを人に強く伝わるかたちでまとめる」フェーズ。具体的には以下のような行程になる。
- ストーリーラインの磨き込み
- 論理構造の確認
その際鍵となる新しい概念には名前をつけると効果的。 - 流れを磨く
論理の流れがスムーズになるようにする - エレベーターテストに備える
2,30秒ほどで複雑なプロジェクトの概要を簡潔に説明できるようにする
- 論理構造の確認
- チャートの磨き込み
目的
聞き手に
- 扱っている問題の重要性を理解してもらう
- 最終的な結論を理解してもらう
- 行動に移してもらう
ポイント
- 本質的
- シンプル
「何に答えを出すのか」という意識を発表の前面に満たす。シンプルに無駄をなくすことで受け手の問題意識は高まり、理解度は大きく向上する。一方イシューが曖昧であればあるほど受けての気は散り、理解度は落ちる
その他印象に残ったエッセンスなど
「悩む」と「考えるの違い」
考える | 悩む | |
前提 | 答えが出る | 答えが出ない |
特徴 | 生産的・建設的 | 非生産的、変化を生まない |
「悩んで」ばかりいると、時間だけが浪費されてしまうので注意するようにしたい
イシューが特定できない時のアプローチ
アプローチ | 内容 |
変数を削る | いくつかの変数をグルーピングをしたり固定するなどして減らし、見極めるポイントを整理する |
視覚化 | 問題の構造を、図示・視覚化 |
最終形から逆算 | 現状と理想像とのギャップを考える |
掘り下げる | 「だから??」という問いを立て続けて掘り下げ具体化 |
極端な事例を考える | ある変数を極端な値に変更し考えてみる(ちなみに自分はこのやり方けっこうやっているという自覚がある。) |
これでダメなら諦め他を探す。
イシュー分解の型
- 「where」、「what」、「how」で分解
それに加えて自分の視点を加えたやり方が良い - 最終像から逆算して分解
- フレームワーク
- ビジネスシステム
- 戦略的トライアングル(3C分析)
- バリューデリバリーシステム
- 7S
ストーリーラインの型
型 | 説明 | ポイント |
並列的に「why」を並べ立てる | 「第一に、第二に、第三に、、、というタイプの説明」 | 重要な要素を漏れなくブレなく検討する |
「空・雨・傘」 | 「空」(課題の確認)、「雨」(課題の深堀)、「傘」(結論) | 日常生活よく使う論理の流れなのでそんな気にしなくていい |
「比較」が効果的な分析である脳科学的な根拠4つ
分析において「比較」が効果的である根拠として4つの脳の知覚の特徴が挙げられていた。
領域 | 特徴 | 説明 |
入力 | 閾値を超えない入力は意味をなさない | ある一定のライン |
認知 | 不連続な差しか認知できない | 明確な対比で差分を明確にすればするほど認知度合いは高まる |
理解 | 情報の繋がり | 詳細は割愛するが、 |
記憶 |
学者というバックグラウンドを持つ著者ならではの見解で特に興味深かった
定量分析の3つの型
型 | 説明 | 具体例(該当する図表の名称を羅列している) |
比較 | 分析の本質 | コラム、バー、分布図、ヒストグラム |
構成 | 全体と部分の比較 | パイ、スタック、ウォーターフォール |
変化 | 同じものを時間軸上で比較 | ライン、コラム、レンジ |
定量分析とはこの三つの方の組み合わせでしかない。何を比較軸とするかがポイント。
分析の軸を出す方法
たくさんの事例を出して、似ているものを束ねていく。スポドリを飲む例に取る。
まず事例を羅列
- スポーツの練習
- 試合中
- 風呂上がり
- 二日酔いの朝
- 夏の外出中
- 運動後の休憩
似たようなものを束ねると・・・
- 運動中
- スポーツの練習
- 試合中
- 汗をかいた後
- 風呂上がり
- 運動後の休憩
- 飲酒後
- 二日酔いの朝
となる。
天才の資質について
天才の条件についてマービン・ミンスキー(MIT人工知能研究所の設立者)が以下のように述べたらしい。
- 仲間の圧力に左右されない
- 物事の本質を見失なわず、希望的観測にすがることが少ない
- 多くのやり方を持ち、一つのやり方に固執しない。
筆者の解釈としては固執しないことであるとまとめられていた。
優れたチャートの3条件とその磨き込み
- 1チャート1メッセージの徹底
「このチャートで何を説明したいのか」ということをしっかり言葉に落とすこと
人がチャートを見て「わかる」「意味がある」と判断するまでの時間は、経験的に長くて15秒、多くの人は10秒程度だ。〜〜人はこの程度の時間で「その資料をきちんとみるかどうか」を判断している。つまり、最初のつかみが悪ければそのチャートは存在しなかったことと同じになってしまうのだ。
- 適切なタテ軸とヨコ軸の選定
- フェアな選定
恣意的な選定は信用性・説得力を損なうのでNG - 軸の順序に意味を持たせる
「大から小へ」・「プロセス順」など - 軸の統合と合流
重なっているはずの比較条件を統合 - 軸の切り口の見直し
基本単位を見直すとよい
- フェアな選定
- メッセージと分析表現の一致
- 様々なチャート(表現技法)を試してみる
- 「軸の刻み」の見直し
感想
- コンサルってすごい(小並)
筆者の、事象を高次化・抽象化する能力の高さをひしひしと感じながら読み進めた。 - 練習が必要そう。
いろんな物事においてなるべく意識し、実践していきたい。 - 生産性とか作業効率は大事にしたい
時間には限りがあるし、有効に活用したい。またそのための努力は惜しまないスタイルでいきたい。